展覧会レポート「デヴィッド・ホックニー展」

東京都現代美術館にて、2023年7月15日(土)-11月5日(日)の会期で開催されている「デヴィッド・ホックニー展」に行ってきました。日本では27年ぶりになる本格的な個展です。
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/hockney/index.html

自分自身がホックニーの作品に出会ったのは、ホックニーが50代前半で、まさに世界的なアーティストとしての地位を固めていた頃です。その時に感じた衝撃はかなりのものでした。そんなこともあり、教室の授業の中で、自宅のプールの連作やフォトコラージュ、キュビズム的作品を引用して、対象を観察することについて、折に触れて説明する作家でもあります。

今回の展覧会で驚いたのは、80を優に超えた今でも絶えることない新たな表現への探究心です。

F50号50枚による組作品《ウォーター近郊の大きな木々またはポスト写真時代の戸外制作》2007年、9メートルを超える極彩色の油絵作品《春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年》では、そのサイズで、キャンバスと油絵の具という実材を用いて描くということの意味について考えさせられました。

そして2010年から継続的に制作しているiPadドローイングの一群と、それを応用展開した全長90メートルの大作《ノルマンディーの12か月》(2020-21年)と対峙した時には、もう言葉も出ませんでした。「見る」→「描く」という一見単純な行為を突き詰めていくことによって、全く新しい地平がひらけている。そんな感想を持ちました。

意外だったのはiPadドローイングの制作過程でした。特別なソフトを使って、IT技術を凝らして描いているのかと思いきや、一番シンプルなソフト「Brushes」を使っているそうです。そしてそのプロセスは、実際の紙の上に絵具で線を引いたり、塗りつぶしたりするやり方そのものでした。ホックニーにとって、iPadは絵筆や絵の具と全く同じなのではなかろうかと感じました。

’90年代以前の作品は撮影禁止でしたので、ここで紹介するのはそれ以降のものです。初期の作品も含めて、生徒たちには現場で是非観てほしい展覧会です。


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